2020/03/09

門脇浩明特定助教が第24回日本生態学会宮地賞を受賞しました。(2020年3月8日)

2020年3月8日、名城大学において第24回日本生態学会が開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により中止になり、各賞の発表と受賞講演のみ行われました。

本ユニット門脇浩明特定助教は「宮地賞」を受賞し、受賞講演を行いました。受賞講演は会員に向けてライブ配信され、大変多くの視聴がありました。

 

受賞者名:門脇浩明

受賞論文:いかにして生物多様性は維持されているのか

要旨:
 生物は食べ物や生息地をめぐって争っているのに、なぜ、強い者だけでなく弱い者も生き残り共存できているのだろうか。自然界では様々な生物が共存し、一見安定しているように見えるのに、なぜ、何らかの出来事をきっかけに突如劇的な変化が生じるのだろうか。私は、こうした謎を解き明かすことを目指し、生物どうしの相互作用に着目した研究を行ってきた。
 学部時代に先輩から教えられたIlkka Hanskiの卒業論文には、「キノコを住処とする昆虫の生態がなぜこれほど多様なのか」という問題に対し、進化生態学や個体群生態学などあらゆる視点で迫る鮮やかな研究の世界が広がっていた。私はその世界に魅せられ、キノコに集まる昆虫群集の共存機構を最初の研究テーマに据えた。マニアックなシステムの自然史からこそ生態現象の新たな発見が生まれると信じていた。自ら研究を計画し、サンプリングを行い、昆虫標本が増えることに楽しさを感じた。得られたデータの解析方法を探り、膨大な量の論文を読み、自身の研究がパッチ状環境の生態学と呼ばれる分野に位置付けられることを知った。2年間取り溜めたデータは、シミュレーションのプログラムを試行錯誤することで結果を導き出した。しかし、その結論は昆虫群集の共存は集中分布モデルで説明できるというありきたりなものだった。マニアックな研究材料の特徴を群集生態学の新規性につなげることができなかったのである。これが初めての挫折であり群集研究の難しさに打ちのめされた瞬間だった。
 あれから10年の時が過ぎ、少しずつ自分が納得できる生態学研究をできるようになってきた。これまでを振り返って、細菌・菌類・原生動物・植物・昆虫まで幅広い生物群や研究テーマをわたり歩いてきたのは、なぜだろうかと考える。その答えは、生物間相互作用についてもっと知りたいという思いがあったからに違いない。しかし、理由はそれだけではない。様々な生物やスケールの生態学を融合し、各分野を超えて興味関心の糊代を広げ重ね合わせることが求められる時代が近づいていることに気づいていたからだと思う。これまで、生態学を俯瞰できるような研究者になりたいと、まだ見ぬ答えに向かって闇雲に走ってきたように思う。今日この日を迎え、これから歩むべき道に一筋の光が差してきただろうか。自分の信じる生態学の道をまっすぐに進んで行きたい。

 

門脇特定助教からは、「この度、新型コロナウイルスの影響により学会が中止となる大変な状況の中、生態学会会長をはじめ多くの先生方のご尽力により、ライブ配信という形で受賞講演の機会を与えていただきました。 受賞講演では、普段論文に書くことのない「これまで自分自身がどんな思いをもって研究を行ってきたのか」についてお話をさせていただきました。その中で、私が最も強調したかったのは、出会いを大切にすること、それは、研究者だけでなく、その研究を支えてくださる全ての方とのつながりを大事にすることこそが現在の研究、今後の研究につながっているということでした。 生態学会における宮地賞は、文学界でいう芥川賞と例えられたことがあります。 そんな素晴らしい賞をいただけたことで、これから進むべき道を少し明るく照らされたように感じると同時に、研究者としての歩みに自信を持ってさらに前へと進むことができると思っております。 今後も生態学を広く俯瞰できる研究者を目指し、どんな困難があろうとも自分のやるべき生態学をしっかりと見据え、真っ直ぐに取り組んでいきたいと思います。」との抱負が寄せられました。

受賞の様子
占部城太郎日本生態学会長と記念撮影
受賞講演の様子
受賞者・大会実行委員会・事務局の皆さんとの記念撮影